
国家意識に中間路線はない
ジャーナリスト 王景弘
過去百数十年、台湾の政治運動の二大目標は、対内的にはこの土地の主人公になることであり、対外的には主権独立である。民主化と本土政権の樹立により、台湾人自身が主人公になる目標は実現した。
だが、もう一つの主権独立の目標は、客観的条件は整ったが、内にアイデンティティへの認識の違いがあり、外に中国覇権の抑圧を受け、
達成までには尚努力が必要だ。
主権独立の目標の追求からいえば、陳水扁総統は二つの大きな過ちを犯した。
第一に、総統のリーダシップを発揮し、台湾の国家意識の確立、愛国心の醸成などに努めるべきだったが、彼はそれをしなかったばかりか、逆に、議論を回避し、親中統一派に譲歩を重ね、台湾意識の成長を抑制した。これにより、大中国主義者は、台湾人が艱難辛苦の末勝ち取った民主主義と自由主義体制を悪用し、中国意識の宣伝に努め、狂ったがごとく台湾の国家意識を侮辱している。
第二に彼は、国の安全保障と敵味方の観念について、人々を正しい方向に導くことをせず、逆に「金銭欲の追求」を奨励し、従来の「拙速を戒める」対中投資政策を放棄したため、企業は台湾に背を向け、競って中国に進出した。このため、台湾の失業者は急速に増大した。
この二つの大きな過ちにより、国内で深刻な混乱が生じ、台湾の方向性はどこを向いているのか、目標はどこにあるのか、多くの人は理解に苦しむ。中国は、四百基以上のミサイルの照準を台湾に定め、膨大な兵力を沿岸一帯に配置している。それは明らかに台湾に対する敵意と脅威の現れであるが、台湾政府は、企業が資金とハイテク技術を中国に導入するのを認めているのだ。このような敵味方の分別がつかない状況に対し、アメリカの友人は、台湾は本当に中国の敵意を知らないのか、または台湾防衛の責任をアメリカに任せ、自分たちは敵側との商売で金儲けに励んでいるのだとさえ疑っている。
近視眼的な金儲け第一主義のもと、資金は中国に流れ、債務と失業者が台湾に残る。大中国主義者はさらにこの現象を煽り立て、親中統一の宣伝を行い、台湾人の自信を失わせ、台湾人の国家意識を一層衰微させている。
国民党は嘗て、「反共」と「反台独」の二大策略で台湾を統治した。「反共」で中国の併呑に抗し、敵味方の区別をハッキリさせ、敵方を支援したり、投降するものは処刑した。「反台独」は台湾意識の醸成、台湾人が自ら主人公になろうとする意識を抑圧し、戒厳令による独裁統治を維持しようとした。
李登輝前総統が政権を担ってから、民主化、本土化を推進し、いわゆる「動乱を平定するため」の悪法を改廃したあと、「反共」、「反台独」のスローガンは姿を消した。李登輝氏はこれに代わって、「生命共同体」、「新台湾人」、「台湾は主権国家」や「二国論」などを提唱した。
陳水扁氏が総統に当選したのは、李登輝氏の本土政権の延長であり、彼は台湾を裏切ることはなく、台湾意識を抑圧するつもりもないのは、疑いのないところである。また、就任早々、アメリカを安心させ、中国の妄動を防ぐ必要があったのも事実である。しかし彼は、積極的にリーダシップを発揮し、台湾の国家意識の強化に努めなかったのもまた否定できない過ちである。
陳水扁総統は、「反台独」はしないが、さりとて「反共」もせず、企業と親中派がメディアを壟断し、社会に波風立てるのを黙視した。彼は、李登輝前総統の「拙速を戒める」対中投資政策を放棄し、いわゆる「積極開放、有効管理」を持ち出した。ブレーキを踏むところで、アクセルを踏んだのである。これにより、台湾の巨大ハイテク産業は、相次いで当局から中国進出を許可された。陳水扁総統は止めに入らなかった。
陳総統は、主権独立と「民主、人権」をもって、新しいトーテムにしようとした。しかしこの二つは、国家意識、愛国心による団結心と道徳的説得力に替わることはできない。台湾人がすでに得たこの二つの権益は、金儲け主義と、親中統一派がこれらの権益を利用し、中国と示し合わせて台湾の国家意識を抑圧する奸策に対抗できない。
外交であれ、経済であれ、台湾の国家意識を強化しなければ、十分な原動力が得られない。国家意識を強化するには、まず国民党時代の植民式教育から脱却、目覚め、台湾を国家と認めて、自分たちが主役だと認識することである。教育の改革を急がなければならない所以である。李登輝前総統が率いる本土勢力は、大中国主義勢力を迎え撃とうとしている。陳総統もその責任から逃れられない。欧米の自由主義者や保守派は、妥協して中間路線を見いだせるが、国家意識に中間路線はないのである。
(2003年3月17日鯨魚電子報より)
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